「学習に使われないAI」の選び方 ── 無料版と法人版の違いと、確認すべき4つの場所【2026年版】

「学習に使われないAI」の選び方 ── 無料版と法人版の違いと、確認すべき4つの場所【2026年版】


目次
    1. 1)ChatGPT(OpenAI)
    2. 2)Claude(Anthropic)── 「規約は変わる」の実例
    3. 3)Gemini(Google)
    4. 4)NotebookLM(Google)
    5. 5)Microsoft Copilot(Microsoft 365)

医療介護の現場でAIを使うとき、いちばん大きな分かれ目は**「入力した内容が、AIの学習に使われるかどうか」**です。

  • 個人情報保護委員会は、学習に使われるAIに個人データを入力すると、サービス提供者への「提供」になり得ると注意喚起しています
  • 厚労省の医療情報システム安全管理ガイドライン(6.0版)のQ&Aも、医療情報の入力条件を「学習等のために保存されない契約の担保」で整理しています。サーバの国ではなく、契約です
  • そして、同じChatGPTやClaudeでも、無料版と法人版では扱いがまったく違います

この記事でわかること:

  • 主要AI(ChatGPT・Claude・Gemini・NotebookLM・Copilot)の「学習に使われるか」2026年6月時点の比較
  • 学習に使われない設定・契約を確認する4つの場所
  • オプトアウトしても残る落とし穴
  • 規約チェックに使えるコピペ用プロンプト

前回の医療介護のAI活用ルールの記事で「ルール3:AIは国より契約で選ぶ」と書きました。今回はその実践編です。なお、規約は変わります。この記事の内容は2026年6月時点のもので、最終的な確認はご自身で各サービスの最新の規約・設定画面で行ってください。

まず構図:どのAIも「3つの区分」で考えられる

サービスごとに細かい違いはありますが、構図はどのAIも同じです。

区分学習への利用位置づけ
無料・個人版デフォルトで学習に使われることが多いお試し・個人情報を入れない用途まで
法人契約(Team / Enterprise / Workspace など)原則、学習に使われない=契約で担保業務利用の本命
API経由学習に使われない自作ツールやベンダー製品の裏側

つまり「どのAIが安全か」より先に、「どの契約・プランで使っているか」を見る。これが出発点です。

主要AIの現状(2026年6月時点)

ChatGPT(OpenAI)

無料版・Plusは、デフォルトで会話がモデル改善(学習)に使われます。オプトアウトは設定から可能です:設定 →「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ(OpenAIヘルプ)。

一方、ChatGPT Team / Enterprise は最初から「学習に使わない」方針で提供されています。APIも同様です。

Claude(Anthropic)── 「規約は変わる」の実例

Claudeはここが重要です。以前は個人向けでも会話を学習に使わない方針でしたが、2025年8月の発表で方針が転換され、同年9月28日以降、**Free / Pro / Max(個人向けプラン)はデフォルトで会話が学習に利用される「オプトアウト方式」**になりました。オプトアウトしない場合のデータ保持は最大5年です。

オプトアウトは、設定の「Claudeの改善にご協力ください」のトグルをオフにします。オフにすると、以後の新しい会話は学習に使われず、保持期間も30日に短縮されます。なお、Claude for Work(法人向け)やAPI経由の利用はこの変更の対象外で、引き続き学習には使われません。

「昨日まで学習に使わなかったAIが、今日からデフォルトで使うようになる」。これが実際に起きた、ということです。一度確認して終わりではなく、大きなアップデートのたびに見直す必要がある理由がここにあります。

Gemini(Google)

無料の個人版は、入力内容がサービス改善に利用されることがあり、一部は品質向上のため人間のレビュアーが確認する場合があります(Geminiアプリのプライバシーについて)。オプトアウトに相当するのは**「Gemini アプリ アクティビティ」のオフ**です。オフにすると、以後のチャットはモデルの改良に使われません。

Google Workspace(法人)配下のGeminiは、原則として入力データが学習に使われない契約で提供されます。

NotebookLM(Google)

議事録や資料の要約で現場によく登場するNotebookLMは、アップロードしたソース資料もAIとの対話も、モデルの学習に使われないと明言されています(NotebookLMヘルプ。個人版を含む)。Workspace・Education配下ではコアサービス扱いとなり、人間によるレビューも行われません。

私自身、委員会の議事録づくりにNotebookLMを使っています(個人名が出ない会議に限定しています)。今回この記事を書くにあたって改めてデータの扱いを確認しましたが、「ソースも対話も学習に使わない」という公式方針で、使い続ける根拠がひとつ増えました。逆に言えば、こうして使っているツールでも「書くまで正確な扱いを確認していなかった」わけで、確認の習慣こそが大事だと感じます。

Microsoft Copilot(Microsoft 365)

法人アカウント(Entra ID)でサインインした業務向けCopilotは、**プロンプトが学習に使われない「商用データ保護」**の下で動きます。Microsoft 365を導入済みの法人では有力な選択肢です(エディション体系の変化が速いため、導入時は最新仕様を確認してください)。

【比較表】各サービスの取り扱い一覧(2026年6月時点)

ここまでを一覧にまとめます。

サービス無料・個人版の扱い学習を止める設定(個人版)法人契約・API
ChatGPTデフォルトで学習に利用設定 → データコントロール →「すべての人のためにモデルを改善する」をオフTeam / Enterprise / API は学習不使用
Claude2025年9月からデフォルトで学習に利用(保持最大5年)設定 →「Claudeの改善にご協力ください」をオフ(保持30日に短縮)for Work / API は学習不使用
Geminiサービス改善に利用・一部人間レビューあり「Gemini アプリ アクティビティ」をオフWorkspace 版は原則学習不使用
NotebookLMソース・対話とも学習に使われない設定不要Workspace / Education 配下は人間レビューもなし
Copilot個人向けは導入時に最新仕様を確認法人(Entra ID)は商用データ保護で学習不使用

※ いずれも2026年6月時点の公開情報です。規約・仕様は変わるため、導入時は必ず各公式ページで最新を確認してください。

確認する場所は4つ

「学習に使われないか」を確認する場所を、優先順に4つ挙げます。

  1. プランの種別 ── いま使っているのは個人アカウントか、施設の法人契約か。法人契約(Team / Enterprise / Workspace / for Work)は「学習不使用」が契約に含まれるのが通例です。ここが一番大きい
  2. 設定画面のトグル ── 個人版を使うなら必ず確認。上の比較表の「学習を止める設定」の列です
  3. プライバシーポリシー・利用規約の文言 ── 「モデルの改善に使用」「サービス向上のために利用」といった表現、人間レビューの有無、保持期間の記載を探す
  4. 公式ヘルプ・データ処理規約(DPA) ── 法人導入時はDPAで保存先・準拠法まで。規約変更の告知が出る場所でもあるので、ウォッチ先として覚えておく

現場で使うなら、この5問のチェックリストに落とせます。

  1. それは個人アカウントか、施設の法人契約か
  2. 「学習に使う」系のトグルはオフになっているか
  3. 規約に「入力をモデル改善に使う」と書かれていないか
  4. オプトアウト後のデータ保持期間はどれくらいか
  5. 最後に規約を確認したのはいつか(大型アップデート後に見直したか)

落とし穴:オプトアウトすれば安心、ではない

設定をオフにしても、注意点が4つ残ります。

  1. オプトアウト=保存ゼロではない ── 不正利用の監視などのため、一定期間データが保持されるのが普通です(例:Claudeはオプトアウト後も30日)。「学習されない」と「保存されない」は別物です
  2. 人間レビューは別枠 ── 学習に使われなくても、品質向上のためにレビュアーが内容を見る仕組みを持つサービスがあります
  3. 設定はアカウント単位 ── 職場の共有PCで誰かの個人アカウントが開きっぱなし、という状態では、設定がどうなっているか誰も把握できません。施設として使うなら法人契約に寄せるべき理由のひとつです
  4. 規約は変わる ── Claudeの転換が実例です。確認は一度きりにしない

そして大前提として、オプトアウトしてもしなくても、患者・利用者の個人情報をそのまま入れない原則は変わりません。何を入れてよいかの線引き(赤・黄・青)は前回の記事にまとめています。

コピペで使える:規約チェックをAIに手伝わせるプロンプト

利用規約やプライバシーポリシーは長くて読みにくいものです。そこで、規約の確認自体をAIに手伝わせます。貼るのは公開されている規約文書なので、個人情報の心配はありません。

これから生成AIサービスの利用規約(またはプライバシーポリシー)を貼ります。
業務利用の可否を判断したいので、以下の5点に絞って、該当する記載を
原文の引用つきで抜き出してください。記載が見つからない項目は
「記載なし」と明示してください。

1. 入力内容がAIモデルの学習・改善に使われるか(デフォルトの扱い)
2. 学習利用を止める方法(オプトアウト設定の有無と場所)
3. データの保存期間と削除の可否
4. 人間(レビュアー)が入力内容を確認することがあるか
5. 法人契約・API利用の場合の扱いの違い

最後に、医療介護の業務で使う前提での注意点を3行以内でまとめてください。

AIの答えを鵜呑みにせず、引用された原文を自分の目で確かめる使い方をしてください。引用付きで出させるのはそのためです。

まとめ

  1. 分かれ目は「学習に使われるか」。そしてそれは、AIの銘柄より契約・プランで決まる
  2. 個人版はデフォルトで学習利用が増えている(Claudeは2025年に転換)。使うなら設定のオプトアウトを必ず確認
  3. 業務の本命は法人契約かAPI。「学習不使用が契約に書いてある」状態を作る
  4. オプトアウトしても保存・人間レビュー・規約変更の3点は残る。そして個人情報を入れない原則は変わらない

施設でのAI利用ルールづくり全体(入れてよい情報の線引き・掲示用10か条)は、こちらの記事にまとめています。

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