診療報酬改定をAIで読み解く前に。制度リサーチは「検算」が9割【2026】

診療報酬改定をAIで読み解く前に。制度リサーチは「検算」が9割【2026】


目次

診療報酬や介護報酬の改定資料を前にして、こう思ったことはないでしょうか。「全部読む時間はない。でも自分の施設に関係する所を読み落としたくないし、間違った理解のまま現場に伝えるのはもっと怖い」。

制度情報は、速さより正確さが命です。ところがAIは、速いかわりに平気で誤情報を出します。加算の点数、施行日、対象職種。ひとつ数字がずれるだけで、現場への説明が崩れます。

だから私は、制度リサーチをAIに丸投げしません。速く集める作業はAIに任せ、正しいかどうかの検算は人が握る。そのために、1つのAIを信じ込まず、複数のツールを役割で分けてクロスチェックします。

この記事で使う道具は3つです。

  • Claude Code:メインのリサーチ役。全体像の把握と、どこに一次資料があるかの洗い出し
  • NotebookLM:PDFの一次資料を読ませ、質問で必要な所だけ抜き出す役。出典箇所を照合できるのが強み
  • Gemini:セカンドオピニオン役。同じ問いを別のAIに投げ、食い違いを洗い出す

この3つを役割分担させて、2026年(令和8年度)診療報酬改定と骨太の方針2026を実際に読み解いた手順を、コピペできるプロンプト付きで公開します。制度の解説記事ではありません。主役は「検算=AIに誤らせない調べ方」です。

  • なぜ制度リサーチこそ「AI×人の検算」が要るのか
  • Claude Codeで一次資料の在り処を特定する手順とプロンプト
  • NotebookLMで数百ページを段階的に絞り込む質問の型
  • 単一AIを信じず複数ツールで裏取りする、検算の具体手順
  • AIリサーチでやってはいけない3つ

なぜ制度リサーチこそ「AI×人の検算」なのか

結論から言います。制度リサーチでAIを使うなら、集めるのはAI・検算は人、と役割を分けるのが安全です。

理由は単純で、AIは正確さを保証しないからです。もっともらしい文章で、存在しない加算名や、去年の点数や、まだ決まっていない方針を「決まったこと」として書いてきます。これがハルシネーションです。雑談なら笑い話ですが、診療報酬の点数や施行日で起きると、現場への説明ごと間違えます。

一方で、改定資料は膨大です。告示、通知、疑義解釈、団体のまとめ、関連する骨太の方針。全部を人が一次資料から読み切るのは、現場の合間では現実的ではありません。

だから、こう切り分けます。

  • 速く広く集める・全体像をつかむ → AIが得意
  • それが本当に正しいか、出典はどこか → 人が最後に確認する

私が今回の改定を調べたのも、自分の事業に直接関わるからというより、国全体としてリハビリの体系がどう動いているのかを大枠でつかんでおきたかったからです。通所リハに直接ひびく話は、正直そう多くありません。それでも、上流の方向性を管理職として押さえておかないと、現場に伝える判断がぶれます。だから深入りしすぎず、要点だけを拾いにいく。そのためにこの切り分けで進めました。

そして今回、派手なハルシネーション事故は起きませんでした。AIが大嘘をついて、それを人が土壇場で見つけた、という武勇伝はありません。これは運が良かったのではなく、そもそも誤情報が通り抜けない仕組みで調べたからだと思っています。

この記事で語りたいのは、まさにその「起こさせない設計」です。派手な誤り退治ではなく、地味な予防としての検算。順番に見ていきます。


ステップ1 全体像をAIに掴ませ、一次資料の在り処を特定する

最初にやるのは、いきなり中身を聞くことではありません。「この件の一次資料はどこにあるか」をAIに洗い出させることです。

制度情報には、信頼度の階層があります。上から順に、厚生労働省の告示・通知、疑義解釈、そして関連団体(職能団体など)のまとめ、専門メディアの解説記事。検算の土台になるのは上位の一次資料です。まずこの地図を作ります。

ここで使うのがClaude Codeです。私はメインのリサーチをClaude Codeで進めています。全体像の整理と、情報源リストアップを任せる相手です。

  • ステップ1のゴールは「答え」ではなく「どこを見れば答えが確認できるかのリスト」
  • 一次資料(厚労省告示・団体まとめ・原案PDF)の在り処を先に押さえる

実際に使えるプロンプトがこちらです。

あなたは診療報酬・介護報酬制度に詳しいリサーチアシスタントです。
2026年(令和8年度)診療報酬改定について、リハビリテーション領域に関係する
情報を調べたいと考えています。

まず「中身の要約」ではなく、「一次資料の在り処」を整理してください。
次の種類ごとに、確認すべき情報源を挙げてください。

1. 厚生労働省の告示・通知・疑義解釈
2. 関連団体(日本理学療法士協会など)の改定まとめ
3. 骨太の方針2026など、上流の政府方針の原案・資料
4. 専門メディアの解説記事(あくまで補助として)

各項目について、
- 情報源の名称
- できれば公式URL(不確かなら「要確認」と明記)
- その資料でわかることの範囲
を表にしてください。URLがうろ覚えの場合は推測で書かず「要確認」としてください。

ポイントは、最後の一文です。「うろ覚えなら推測で書くな、要確認と書け」と縛りをかけます。AIは空欄を嫌って、それらしいURLを捏造しがちです。ここで先に釘を刺しておくと、検算の手間が減ります。

このステップで手に入るのは、答えそのものではありません。「あとで一次資料に当たって確認すべきポイントのリスト」です。これが次のステップ以降の照合先になります。

AIが出したURLは、この段階では信じません。実在するか、その資料が本当にその内容かは、後のステップで一次資料に当たって確認します。ここではあくまで「当たりをつける」だけ。


ステップ2 NotebookLMで段階的に絞り込む(出典付きで抜き出す)

一次資料の在り処が分かったら、次はその中身を読みます。ただし、数百ページを頭から読むのではありません。NotebookLMに読ませ、質問で必要な所だけ抜き出します。

NotebookLMの強みは、アップロードした資料(ソース)の中だけを根拠に答え、どこに書いてあるかを示してくれる点です。回答の横に出典が付くので、「本当にこの資料にそう書いてあるのか」をその場で照合できます。ネット全体から拾ってくる普通のチャットAIと、ここが決定的に違います。制度リサーチの検算には、この出典照合がとにかく効きます。

やり方は、一次資料のPDF(厚労省の資料、団体のまとめ、骨太の方針2026の原案PDFなど)をソースとして入れ、質問で段階的に絞り込むことです。私はこう絞りました。

  1. まず「リハビリテーションに関わることは何か」で全体を俯瞰する
  2. 次に「通所リハビリテーションに関わること」に絞る
  3. 最後に「専門的に医療に関わる所」まで狭める

いきなり「うちの施設に関係する加算は?」と聞かないのがコツです。粒度の粗い問いから始めて、AIの答えを見ながら一段ずつ絞る。こうすると、絞り込みの途中で「そういえばこれも関係するな」という取りこぼしに気づけます。

段階的に投げていく質問の実物がこちらです。

(ソースに一次資料のPDFを追加した状態で)

【1問目】
このソースの中から、リハビリテーションに関わる改定・変更点を、
箇条書きで挙げてください。それぞれ、ソースのどこに書かれているか
(該当箇所)も示してください。

【2問目】
いま挙げた中で、通所リハビリテーションに関係するものはどれですか。
関係する理由と、ソースの該当箇所も添えてください。

【3問目】
そのうち、専門的に医療(診療報酬)として算定に関わる部分はどれですか。
介護報酬の話と混ざらないよう、区別して整理してください。
該当箇所も示してください。

毎回「該当箇所も示して」と付けるのが肝です。出典を必ず一緒に出させることで、次の検算ステップでの照合が楽になります。

このやり方で実際に手繰り寄せられた例があります。私の施設に関係する処遇改善の話に、段階的な絞り込みでたどり着けました。詳しくは検算の話とあわせて次の章で書きます。

作業そのものは、驚くほど短く済みます。一次資料のPDFを探して落とし、NotebookLMにアップロードする準備が5分ほど。段階的な質問で必要な所を抜き出すのが10分足らず。時間をかけるのは、そのあとの「正しいかどうか」のチェックです。


ステップ3 検算──単一AIを信じず、役割分担でクロスチェック

ここがこの記事の主役です。

集めた情報を、そのまま現場に流してはいけません。最後に検算します。検算といっても、AIの答えを一行ずつ疑って粗探しする、という話ではありません。そもそも誤情報が通り抜けない導線を先に組んでおく、という意味です。予防としての検算です。

具体的には、3つの照合を重ねます。

  1. NotebookLMの出典照合:答えの根拠が、一次資料のどこに書いてあるかを確認する
  2. Geminiのセカンドオピニオン:同じ問いを別のAIに投げ、食い違いを洗い出す
  3. 一次資料PDFでの最終確認:食い違った点・重要な数字は、自分の目で原本に当たる

1つ目は、ステップ2でNotebookLMに出典を付けさせた時点で半分終わっています。答えの横の該当箇所を開き、原文と突き合わせる。ここで「AIの要約」と「原文」がずれていないかを見ます。

2つ目が、複数AIによる裏取りです。Claude CodeとNotebookLMで得た結論を、今度はGeminiに同じ問いとして投げます。狙いは、別々に育ったAIに同じ質問をして、答えが一致するかを見ることです。2つが同じことを言えば確度が上がる。食い違えば、そこが要確認ポイントとして浮かび上がります。

Geminiに投げるプロンプトの実物です。

2026年(令和8年度)診療報酬改定について、セカンドオピニオンが欲しいです。
私は別の資料から、次のように理解しています。この理解が正しいか、
公開情報をもとに検証してください。

【私の理解】
・本体改定率は+3.09%(約30年ぶりの高い水準)
・AI関連の加算は画像診断支援や手術支援など高度医療が中心で、
 リハビリ領域に直接のAI加算はほぼ無い
・リハでは早期リハビリテーション加算が増点された
・処遇改善に関わる仕組みとして、リハ職も対象になるものがある

上記のそれぞれについて、
1. 正しい/誤り/要確認 のどれか
2. その根拠(できれば公式資料名)
3. もし私の理解に抜けや誤解があれば、その指摘
を返してください。断定できない項目は、無理に断定せず「要確認」としてください。

Geminiの答えとNotebookLMの答えが一致した項目は、確度が高いと判断します。片方だけが言っている・食い違う項目は、3つ目の一次資料PDFで自分の目で確認します。

この検算を通したことで、今回はっきりさせられたことが2つあります。

  • 骨太の方針2026は「原案」段階だと分かった。6月30日に原案が示され、閣議決定は7月にずれ込む見通し。だから「国が決めた」ではなく「原案で示された/位置づけられた」と書くべきだと判定できた
  • AI関連の加算は、リハビリ領域には直接ほぼ無いと確認できた。加算目当てでなく、情報キャッチアップの手段としてAIを使う、という自分の立ち位置がはっきりした

そしてもう1つ、段階的な絞り込みと検算がかみ合った実例があります。処遇改善に関係する仕組み(ベースアップ評価料)にたどり着けたことです。これはリハ職も対象職種で、令和8年度改定で点数の引き上げと対象拡大が行われる仕組みです。

ただし、ここが検算の効いた所です。これは医療(診療報酬)の仕組みであって、通所リハ(介護報酬)が直接の算定対象ではありません。AIに軽く聞くと、この区別があいまいなまま「通所リハも対象」と読めてしまいかねない。原本で確認して、医療と介護の線引きをはっきりさせました。

そのうえで私の現場実感として、病院が母体の場合は、病院全体の賃上げ方針として通所リハの職員にも波及しうる、と捉えています。制度上の直接対象ではないが、母体の方針として関わってくる。この温度差まで含めて理解できたのは、複数ツールで検算したからです。

制度の数字や施行日は、この記事の裏取り済みの範囲を超えて自分で足さないこと。AIが自信満々に別の点数を出してきても、一次資料に載っていなければ「要確認」で止める。これが検算の一番大事な作法です。


AIリサーチでやってはいけない3つ

ここまでの手順の裏返しとして、避けるべき失敗を3つに整理します。

やってはいけない① 要約の鵜呑み。AIの要約は、要点をつかむには便利ですが、原文と微妙にずれることがあります。数字・加算名・対象職種のような「間違えたら現場が困る所」は、必ず一次資料の該当箇所で確認してから使う。

やってはいけない② 古い情報を掴む。改定は年度で内容が変わります。AIは前回改定の内容を「最新」として返すことがある。「令和8年度(2026)の」と年度を明示して聞く。処遇改善の仕組みのように、新設された年度と拡充された年度が違うものは特に注意(例:新設が令和6年度、拡充が令和8年度)。

やってはいけない③ 「原案」と「確定」の混同。骨太の方針2026は、7月時点で原案の段階でした。原案を「国が決めた方針」として現場に伝えると、後で覆ったときに信頼を失う。「原案で示された」「位置づけられた」と、確定していない事実は確定していない言葉で書く。

この3つは、どれも「AIが悪い」のではなく「使い方で防げる」ものです。だからこそ、複数ツールでの検算という導線が効きます。


まとめ──現場での使いどころ

制度リサーチにAIを使うときの結論は、シンプルです。集めるのはAI、検算は人。単一のAIを信じ込まず、役割の違う複数ツールでクロスチェックする。

  • Claude Codeで全体像と一次資料の在り処をつかむ
  • NotebookLMで数百ページを段階的に絞り、出典付きで抜き出す
  • Geminiでセカンドオピニオンを取り、食い違いを一次資料で最終確認する
  • 数字・施行日・「原案か確定か」は、裏取り済みの範囲を超えて足さない

大事なのは、AIで加算を見つけて儲ける、という話ではないことです。今回の改定でも、リハビリ領域に直接のAI加算はほぼありませんでした。AIの使いどころは、膨大な制度情報のキャッチアップを省力化し、自施設に関係する所へ早く正確にたどり着くこと。その最後を、人の検算が支えます。

同じ「原本へ戻れる形を先に作る」という考え方は、紙アンケートの集計にも使えます。回答番号・PDFページ・原文を残し、AIの集計結果を人が照合しやすくする方法を、50枚超の実例とともにまとめました。

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なぜ私が、自分の事業に直接ひびくわけでもない制度改定まで追いかけるのか。その根っこには、予防とリハビリへの思いがあります。今回リハビリが原案で「攻めの予防医療」に位置づけられたことを、一人のPTとしてどう受け止めたかは、noteに書きました。あわせて読んでもらえたらうれしいです。

自施設に合ったAIの使い方や、チームへの広げ方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。現場でAIをどう活かせるかの相談はこちらでも受け付けています。


この記事のまとめ

  1. 制度リサーチは、集めるのはAI・検算は人、と役割を分けるのが安全
  2. ステップ1:Claude Codeで一次資料の在り処を洗い出す(URLは推測させず要確認と書かせる)
  3. ステップ2:NotebookLMに一次資料PDFを入れ、粗い問いから段階的に絞る。出典を必ず出させる
  4. ステップ3:Geminiでセカンドオピニオンを取り、食い違いは一次資料で最終確認する
  5. やってはいけない3つ=要約の鵜呑み・古い情報・「原案」と「確定」の混同
  6. AIは加算探しの道具ではなく、情報キャッチアップを省力化する道具。最後は人の検算で締める

出典(この記事の制度情報の裏取り元)


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