学会出張の旅費見積もり、AIに丸投げしたら14,536円ちがった

学会出張の旅費見積もり、AIに丸投げしたら14,536円ちがった


目次
    1. 1)プロンプト①:ざっくり4行
    2. 2)しかもこのプロンプト、学会名が間違っていた
    1. 1)Geminiは、運賃ではなく行程を取りこぼしていた
    2. 2)運賃も、公式ソースと突き合わせるとズレる
    1. 1)プロンプト②:根拠URLを一覧で出させる
    2. 2)そして、食い違いが見えた
    1. 1)提出する前に、必ずここを確認する
    2. 2)次の学会で試すなら

空欄のWordの様式をAIに添付して、4行のお願いを投げる。それだけで学会出張の旅費見積もりは埋まります。会期も会場も経路も、こちらは調べていません。しかも、これまで面倒で申請していなかったバスの数百円まで、1区間ずつ拾ってくれる。ただし、同じ条件でClaudeとGeminiに投げたら、総額が14,536円ちがいました。だから丸投げして終わりにはできません。根拠URLを出させて、答え合わせする。ここまでがセットです。

使うもの。

  1. 職場の出張旅費計算書(Word/Excelの様式そのまま)
  2. Claude(この記事のモデルはOpus 4.8)
  3. 比較用にGemini(モデルは3.1 Pro)
  4. プロンプト2本(ざっくり依頼+根拠URLの提出依頼)

順に見ていきます。まずは、なぜ学会の旅費が面倒なのかから。

  • Wordの様式をAIに直接埋めさせる手順(プロンプト全文つき)
  • ClaudeとGeminiで、どこがどうちがったのか
  • AIの計算を確かめるための追いプロンプト
  • 提出前に人が確認すべき4点

学会に行く前に、申請書という壁がある

学会に行くと決めても、それだけでは行けません。出張申請を通す必要があります。そして申請書には、旅費の見積もりを書く欄がある。

ここで多くの人が引っかかります。理由は単純で、まだ切符も領収書も手元にないからです。旅費計算というと、出張から帰ってきて領収書を集める作業を思い浮かべるかもしれません。でも申請は行く前。必要なのは「いくらかかる見込みか」という概算です。

概算を出すには、調べものが要ります。会期はいつか。会場はどこか。自宅の最寄り駅から空港までいくらか。空港から会場までは何で行くのか。会期中はホテルと会場を何往復するのか。ひとつひとつは短い調べものでも、積み上がると相応の時間を持っていかれます。しかも出てくるのは、あくまで見込みの数字。

この「調べて、組み立てて、様式に転記する」という一連の作業が、まるごとAIの得意分野です。

正直に書くと、これまで私は細かい交通費をきちんと申請していませんでした。飛行機や新幹線のような大きい額は出しますが、バスの数百円は面倒で、そもそも領収書も取っていない。200円、300円のために乗り継ぎを1区間ずつ調べて書き出すくらいなら、まあいいか、と諦めていました。積み上げれば数千円になるのに、です。

やったこと──Wordの様式を添付して、4行投げただけ

使ったのは、押印欄つきの出張旅費計算書。基本情報、交通費、宿泊費、その他(参加費など)、合計、署名欄という、どこの職場にもあるあの様式です。

特別な様式は要りません。あなたの職場でいつも使っている出張旅費計算書を、そのまま使ってください。

多くの職場では、WordやExcelの様式を配って埋めてもらうのがスタンダードです。その現物をそのままAIに渡せる、というのがこの方法のいちばんの利点。新しいツールを導入する必要はありません。

プロンプト①:ざっくり4行

Wordファイルを添付したうえで、投げたのはこれだけです。

出張旅費を計算したいです。調べてテンプレートの空白部分を埋めてください。
出張先は第10回日本リハビリテーション医学会に行きます。
出発地は北九州市戸畑区から、公共交通機関を使って行きます。
大きくは飛行機で移動するので、その他の細かなバス、電車などの移動費用も計算してください。

日付を書いていません。会場も書いていません。予算も、宿泊数も、飛行機の便名も書いていません。

ClaudeにWordの様式を添付し、4行のプロンプトを投げた画面。Claudeが「第10回」=秋季学術集会と特定し、会期・会場を返している

しかもこのプロンプト、学会名が間違っていた

ここが面白いところです。プロンプトに書いた「第10回日本リハビリテーション医学会」という名前は、正確ではありませんでした。日本リハビリテーション医学会の本大会は第63回。第10回に当たるのは「秋季」学術集会のほうです。

Claudeは第一声でこう返してきました。調べた結果、「第10回」は日本リハビリテーション医学会「秋季」学術集会でした、と。そのうえで会期と会場まで引いてきます。

  • 第10回 日本リハビリテーション医学会 秋季学術集会
  • 会期:2026年10月29日(木)〜31日(土)
  • 会場:パシフィコ横浜 会議センター(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)
  • 出典:https://site.convention.co.jp/jarma10/outline/

「AIは正確に指示しないと動かない」というのは、思い込みです。少し間違ったプロンプトでも、直して動く。まずはざっくり投げてみる価値があります。

結果──埋まった。ただしClaudeとGeminiで14,536円ちがった

同じWordファイル、同じ4行のプロンプトを、ClaudeとGeminiの両方に投げました。どちらも各社の上位モデルです。Claudeは Opus 4.8、Geminiは 3.1 Pro を使っています。

ひとつ、入口の時点で差がありました。Claudeは埋めたWordファイルをそのまま出してきます。一方Geminiは、チャットの中にテキストで表を並べただけでした。「Wordで出力してください」ともう一度お願いして、ようやくファイルが出てきます。提出用の書類がほしいだけなのに、ひと手間増えます。

そのうえで、どちらもきちんと様式を埋め、書類の顔をして出てきました。総額はこうなりました。

Claude(Opus 4.8)Gemini(3.1 Pro)
交通費42,444円52,980円
宿泊費30,000円30,000円
その他(参加費等)10,000円14,000円
合計82,444円96,980円
行程2泊3日3泊4日

差は14,536円。どちらも見た目は完成した申請書です。並べて比べなければ、まず気づけません。

Geminiは、運賃ではなく行程を取りこぼしていた

差額の中身を追うと、Geminiには構造的な計算漏れがありました。

Geminiは横浜に3泊させています。それなのに、会場への往復を10/28と10/31の片道ずつしか計上していない。つまり会期中(10/29・10/30)のホテルと会場の行き来が、丸ごと抜けている

運賃を間違えたのではなく、行程そのものを取りこぼしている。実務ではこちらのほうが痛い。金額の桁が合っていると、目視ではまず見つかりません。Claudeは3日分の往復をきちんと積んでいました。

運賃も、公式ソースと突き合わせるとズレる

主要な区間の運賃を、駅探と横浜高速鉄道の公式運賃表で確認しました。

区間ClaudeGemini実際
戸畑→小倉(JR)270円210円270円
羽田→横浜(京急IC)397円340円397円
横浜→みなとみらい190円230円200円(IC193円)
小倉→北九州空港(バス)710円710円710円

Claudeのほうが実額に近い。ただしClaudeも、みなとみらい線で微妙にズレています。この190円という数字は、あとでもう一度出てきます。

なお、航空券は「そら旅」で11,660〜38,500円と幅がありました。購入時期で変わるので、そのまま使える数字ではありません。旅客施設使用料(北九州発100円・羽田発450円)はスターフライヤーの公式運賃ページに沿った額でした。

決定的な差は「わからない」と言えるかどうか

金額の精度以上に差が出たのが、参加費の扱いでした。

第10回秋季学術集会の参加費は、2026年7月時点で公式サイトに出ていません。参加登録ページ自体が未公開です。つまり、正解が存在しない項目。

  • Claude:10,000円を計上したうえで、備考に「参加登録ページ未公開のため暫定計上」と明記。根拠URLを聞いたときも「2026年7月時点で未公開」と自己申告した
  • Gemini:14,000円を「目安額」として計上。根拠の記載なし

これは精度の差ではありません。不確実性に対する誠実さの差です。

申請実務の目線で言えば、暫定計上であることが書類に残っているかどうかは決定的に重要です。あとで実額と入れ替える必要がある項目が、ひと目でわかる。逆に「目安額」とだけ書かれた14,000円は、そのまま確定額として提出されてしまう危険があります。

AIを選ぶときに見るべきは、当たっているかどうかだけではありません。わからないときに、わからないと言うかどうか。ここを見てください。

答え合わせプロンプトが、Claude自身のズレまで見つけた

ここからが本題です。丸投げして出てきた書類は、そのままでは信用できません。だから、根拠を出させます。

プロンプト②:根拠URLを一覧で出させる

算出した各金額について、根拠にした情報の参照URLを一覧で出してください。
URLが確認できない金額には「根拠URLなし・要確認」と明記してください。

たった2行。でもこれが、この記事のもうひとつの核です。

Claudeは、学会情報/航空券/バス/鉄道/参考のリムジンバス案とカテゴリ別に整理し、それぞれの参照URLを並べて返してきました。聞いてもいないリムジンバス案(YCATまで800円)まで併記してきます。

Claudeが算出金額の根拠URLを、学会情報・航空券・バス・鉄道などカテゴリ別に並べて返している画面

そして、食い違いが見えた

出てきた根拠URLの一覧を、さっきのWordの表と突き合わせると、こうなっていました。

  • Wordの表:みなとみらい線「190円 × 往復」
  • 根拠URLの出力:羽田→みなとみらい「IC 590円」= 京急397円 + みなとみらい線193円

Claudeは、正しく193円を把握していました。それなのに、表には190円と丸めて書いていた。

金額としては3円の差です。実害はほとんどない。でも重要なのはそこではありません。答え合わせのプロンプトを走らせたからこそ、この食い違いが見えたという事実のほうです。3円の丸めが見えるということは、3,000円の取りこぼしも見えるということ。Geminiの会場往復漏れも、同じやり方で見つかります。

AIに調べさせた数字は、AI自身に根拠を出させて突き合わせる。制度や報酬のリサーチでも同じ話を書きました。

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Claudeが根拠URLの一覧を締めくくり、航空券と参加費は実額確定後に差し替えが必要と伝えている画面

まとめ──申請は概算でいい。丸投げして、答え合わせして、確定したら差し替える

Claudeは、根拠URLの一覧をこう締めくくりました。

航空券と参加費だけは実額が確定してから差し替えが必要です。

これはAIの言い訳ではありません。申請実務の正しい手順そのものです。申請は概算で出す。航空券を取り、参加登録が始まったら、確定した実額に差し替える。もともとそういう仕事です。AIはその手順を、こちらが指示しなくても押さえていました。

  • 空欄のWordの様式を添付して4行投げれば、旅費見積もりは埋まる
  • ただしClaudeとGeminiで14,536円の差。書類の顔をして出てくるので、比べないと気づけない
  • 根拠URLを出させて答え合わせする。ここまでやって初めて提出できるたたき台になる

提出する前に、必ずここを確認する

  • AIが出すのはたたき台。そのまま提出しない。最後に必ず人が確認する
  • 旅費規程は施設ごとに違う(宿泊料の上限、距離区分など)。自分の職場の規程を先に確認する
  • 運賃はAIの知識が古い場合がある。根拠URLを出させて、公式の運賃検索と照合する
  • 個人情報(氏名・住所)は、必要がなければ様式から外して渡す

次の学会で試すなら

次の学会の申請が回ってきたら、職場の出張旅費計算書の様式をAIに添付して、この記事の4行を出発地だけ書き換えて投げてみる。それだけです。うまくいかなければ、いつもどおり自分で調べればいいだけ。失うものはありません。

実際にやってみた所感を正直に言うと、ちょっとビビりました。プロンプトを投げて、トイレに行って戻ってきたら、もう表が埋まっている。あとは背景と根拠URLを確認して、問題ないことを確かめたら提出するだけ。これまで面倒で諦めていたバスの数百円まで、ちゃんと1区間ずつ拾って計上してくれていました。圧倒的に楽です。

発表の準備が終わったら

学会準備には、旅費のほかにも越える壁があります。その手前でつまずいている方は、こちらもどうぞ。

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