目次
同じ質問に何度も答えてきた室長てつです。
もうマニュアル管理はこれ一択。Gemini Notebook、使いましょう!
「その手順、どうでしたっけ?」この質問に、月に何回答えているでしょうか。
- 新患・新規利用者の受け入れ評価手順
- 電子カルテの操作方法
- 部署内の細かなマニュアルなど
やっかいなのは、聞かれた側もすぐには出てこないこと。共有フォルダを開いて、それらしいファイルを3つほど開いて、ようやく「これです」と渡す。就業規則も手順書もちゃんとあるのに、毎回この手間がかかります。
資料をまとめて1か所に入れて、現場の人が言いそうな言い方で質問する。答えが出れば、その時点で共有は済んでいます。答えが出なければ、足りないのはAIではなく資料の側です。
使うものは3つだけ。
- Gemini Notebook(旧NotebookLM):Googleアカウントがあれば無料
- すでにある就業規則・部署のルール・書類の書き方・手順書・引き継ぎ書
- 想定質問リスト:これまで自分が聞かれてきたことを10問ほど書き出したもの
- 入れるのは「すでにあるもの」だけでいい理由
- 職場の資料を入れてよいかどうかの線引き
- Google Driveと同期して「最新版はどれか」を探さなくする形
- 現場の言い方のまま質問する、想定質問リストの5つの列
- ○△×の判定から、資料のどこを直すかを決める手順
- 新人教育・電子カルテ操作・引き継ぎへの広げ方
先に漫画でざっと流れを見たい方は、まんが『最新版、どれですか?』をどうぞ。
まず、何を入れるかから始めます。
入れるのは「すでにあるもの」だけ
最初にはっきりさせておきます。この方法のために、新しく資料を作る必要はありません。
入れるのは、職場にもう置いてあるものです。
- 就業規則、休暇や届け出のきまり
- 部署内で決めているローカルなルール
- 書類の書き方、記入例
- 電子カルテや記録ソフトの操作手順
- 前任者から引き継いだ引き継ぎ書
どれも「ある」のに聞かれる。理由はシンプルで、置き場所がばらばらだからです。共有フォルダ、キャビネットの紙、前任者からもらったWordファイル、誰かの机の上のメモ。探す場所が5つあると、人は探すより先に、近くにいる詳しそうな人へ聞きます。
聞かれる側が悪いわけでも、聞く側が横着なわけでもない。単に、探すより聞いたほうが速い状態が続いているだけ。
Gemini Notebookはノートブック単位で資料を持てるので、ここに全部まとめれば、探す場所が1つになります。内容の質はいったん問いません。古くても、書きかけでも、まず入れる。直すべき場所はこの後の手順で分かります。
まずは共有フォルダを開いて、この1年で誰かに聞かれたことがある資料を3つだけ選んでみてください。
入れていいのか。線引きを先に決める
職場の資料をクラウドに上げる話なので、ここは飛ばせません。
Gemini Notebookは、アップロードしたソース資料もAIとの対話も、モデルの学習には使われないと公式に明言されています。しかも、そのための設定は不要。主要AIの学習ポリシーを規約ベースで突き合わせた結果は学習に使われないAIはどれか5サービスを比較した記事にまとめてあります。
ただし、これは「入れていい」の答えそのものではありません。ツールの仕様より、職場のルールが上です。クラウドサービスの利用可否、業務ファイルを外部サービスに上げてよいかどうか。ここは各法人の規程と情報管理の担当者に確認してから進めてください。
そのうえで、私が引き継ぎで決めている線引きはこうです。
入れない:利用者・患者の個人情報、職員個人の事情がわかる記録、ログインIDやパスワードの類、機微な相談の記録。これらはGemini Notebookに入れず、口頭と紙で直接渡す。
パスワードの類を入れないのは、学習うんぬん以前の話です。誰でも質問すれば引き出せる状態になるのは、共有の仕方として危ない。引き継ぎでも、アカウント情報だけは紙で手渡ししています。
何をAIに渡してよくて、何を渡してはいけないのか。公的ガイドラインをもとにした判断基準は医療介護現場でAIを使うときのルール5つで整理しました。迷ったらこちらを先に読んでください。
入れる前に、対象の資料を「業務の決まりごと」と「個人が特定できるもの」の2つに仕分けする。作業はこれだけです。
直したら、次の質問から新しい内容で返ってくる
紙のマニュアルとフォルダ共有の一番つらいところ。それは、最新版がどれか分からなくなることです。
「マニュアル_最新」「マニュアル_最新_修正版」「マニュアル_2024改訂」。こうなると、新しい人は判断できません。結局、詳しい人に聞きます。
ここで使うのがGoogle Driveとの同期。Gemini Notebookは、Driveにあるファイルをそのままソースにできます。私は異動にともなう引き継ぎで、引き継ぎ書と業務マニュアル一式をノートブックに取り込み、Driveと同期させた状態で後任と共有しています。元のファイルを直せば、その内容が参照される側に反映される形。読む人は常に1か所を見ればよく、「最新版はどれですか」という質問自体が発生しません。
ひとつ、正直なところ。反映のタイミングや、どこまで自動で追従するかまでは私も詰め切れていません。大きく書き換えたときは、Gemini Notebook側でソースの中身が新しくなっているかを一度確認してから質問するのが確実です。
更新のたびにファイルを配り直さない。これだけで、引き継ぎ後の管理はかなり楽になります。
共有フォルダにある「_最新」が付いたファイル、今日ひとつ開いて、本当に最新か確かめてみてください。
聞き方を設計する。想定質問リストを作る
ここがこの記事の本題です。
資料を入れただけでは、まだ何も分かりません。実際に質問を投げて、答えが返るかどうかを確かめる。そのための質問を、先に紙の上で設計しておきます。
私は後任に実地で確かめてもらうために、想定質問リストを10問、予備を3問作りました。列は5つ。
| 質問(現場で言われそうな言い方のまま) | 返ってほしい要点 | 根拠になる資料 | 判定 | 直すところ |
|---|---|---|---|---|
| 明日の予定がもう決まったあとに、急な欠席の連絡が入りました。どうすればいいですか | 変更の連絡先と、記録をどこに残すか | 業務マニュアル(当日変更の項) | ○△× | |
| 月の締めが2つあると聞きました。何がどう違うんでしたか | 2つの締めの対象と期日の違い | 引き継ぎ書(月次業務の項) | ○△× | |
| このツールが動かなくなりました。誰に頼めばいいですか | 問い合わせ先の順番と、止まったときの代替手段 | 引き継ぎ書(連絡先一覧) | ○△× | |
| 有給を取りたいとき、誰に、いつまでに言えばいいですか | 申請先と提出期限 | 就業規則(休暇の項) | ○△× | |
| 書類の控えは、いつまで保管するんでしたか | 保管年数と保管場所 | 業務マニュアル(文書管理の項) | ○△× | |
| 記録を間違えて登録しました。消していいんでしたか | 訂正の可否と、訂正時の手順 | 操作手順書(記録の訂正) | ○△× |
コピペして表計算ソフトに貼れるよう、列だけ置いておきます。
質問(現場で言われそうな言い方のまま)/返ってほしい要点/根拠になる資料/判定(○△×)/直すところ
言い換えないことが、いちばん大事
質問を書くときの原則はひとつだけ。現場の人が口に出す言い方のまま書くこと。
「当日キャンセル発生時の対応フローについて」と書きたくなりますが、それでは意味がありません。実際に後任が困る場面で口から出るのは「急に休むって連絡が来たんですけど、どうしたらいいですか」のほうです。きれいな業務用語に直した瞬間、テストとしての価値が落ちます。
言い方を整えるのは、答える側の都合。聞く側はいつも雑に聞いてきます。その雑さのままで通るかどうかを見たいわけです。
答えと根拠を、先に自分で書いておく
質問文と同時に、「返ってほしい要点」と「根拠になる資料」を自分で埋めておきます。これを後回しにすると、返ってきた文章を読んで「まあ合ってるかな」で流してしまう。判定になりません。
先に答えを書いておけば、突き合わせるだけで済みます。
○△×で判定する
判定は3段階。
- ○=要点がそのまま出た
- △=資料には書いてあるが、答えが遠回り・要点が抜けている
- ×=答えられない、または内容が間違っている
△と×は資料側の課題であって、AIの出来の話ではありません。ここを混同しないために、判定欄の隣に「直すところ」の欄を置いています。
わざと答えられない質問を混ぜる
10問のうち何問かは、手順書に書いていないと自分で分かっている場所を選んで入れてあります。
理由は2つ。ひとつは、全部○が並ぶリストは検証として機能しないから。もうひとつは、×が出たときに後任が「このツールは使えない」と受け取らないよう、×が出る前提だと先に伝えておきたいからです。
ゼロから質問を書き出すのがしんどい場合は、AIに候補を出させる手もあります。ChatGPTでもClaudeでも構いません。
あなたは、この職場に今日から配属された職員です。
添付した手順書・引き継ぎ書だけを読んだ状態で、現場で実際に
困りそうな質問を20個、口語で出してください。
条件:
- 業務用語に言い換えず、現場の人が口に出す言い方のまま書く
- 資料に答えが書いてありそうな質問と、書いていなさそうな
質問を混ぜる
- 1問1行。説明は不要
出てきた20問から、自分の現場に合うものを10問選ぶ。この選ぶ作業は人がやってください。
去年1年で自分が聞かれた質問を、まず3つ思い出して書き出す。リストはそこから始まります。
出てくるのは答えではなく、資料の穴

リストの先頭に、自分用にこう書いておきました。
目的はGemini Notebookの性能を測ることではありません。資料に穴があるかどうかを見つけることです。
ここを外すと、ただのAI品質テストになります。点数をつけて「まあこんなものか」で終わり、資料は1行も直らない。判定をつけて終わりにしない。 判定の後の作業が本番です。
△と×には、それぞれ決まった直し方があります。
- △が出た質問:入口の資料に「この件は◯◯手順書を見る」の1行を足す
- ×が出た質問:該当する手順書そのものに、抜けている内容を書き足す
- ○が出た質問:もう説明しなくていい。聞かれたらノートブックを指す
Gemini Notebookは、答えと一緒にどのソースのどこを見たかを示します。つまり、直す場所まで特定できるということ。「マニュアル全体を見直す」ではなく「この手順書のこの項目に3行足す」まで落ちます。
資料の見直しが進まない一番の理由は、どこが足りないか分からないことです。全部読み返す気力はないし、読み返しても自分は知っているので穴に気づけない。質問を投げる形にすると、知っている人の目でも穴が見えます。
×が1つ出たら、その日のうちに該当ファイルへ3行だけ書き足す。まとめてやろうとすると、たいてい着手しません。
同じやり方が使える3つの場面
この形が向いているのは、引き継ぎだけではありません。
新人教育
同じ質問を、人が変わるたびに同じ回数受けます。半年後にまた同じ説明をしている。聞ける場所を先に作っておけば、指導する側は「まずこれで調べて、分からなければ聞いて」と言えます。答えを渡すのではなく、答えが置いてある場所を渡す形。そもそも手順書がまだ無い業務は、作るところから始められます。作業しながら3分しゃべるだけで済む方法は新人スタッフ向け手順書をAIで作る方法にまとめました。
電子カルテ・記録ソフトの操作
マニュアルは分厚くあるのに読まれない、の典型です。読まれない理由は、知りたい1項目にたどり着くまでが遠いから。「記録を間違えたときの直し方」だけ知りたい人に、200ページのPDFは開かれません。
異動・引き継ぎ
私が今まさに使っている場面です。引き継ぎ書は渡した時点で終わりではなく、後任が困るのは3か月後。そのとき前任者はもういません。引き継ぎ書を「読む物」ではなく「聞ける物」にして渡せば、自分がいなくなった後も答えが残る形にできます。
渡す前の引き継ぎ書そのものの作り方(業務の棚卸し、判断の書き足し、チェックリスト)は、異動の引き継ぎをAIで作る記事にまとめています。
どれも共通しているのは、聞かれる側の負担が「説明」から「置き場所の整備」に変わること。
自分の業務で、この1年に3回以上聞かれた質問がある人は、その1業務から始めてください。
うまくいかないときに見るところ
答えがぶれる、遠回りになる。そういうときに見る場所は、だいたい2つです。
ひとつめは、用語がそろっていないこと。同じものを、資料Aでは「実施記録」、資料Bでは「日々記録」と呼んでいる。人は文脈で読み替えますが、AIは別のものとして扱うことがあります。対策は用語集をソースに足すこと。これも過去の資料からAIに下書きさせれば始められます。手順はGemini Notebookの用語集の作り方に書きました。
ふたつめは、資料が多すぎること。全部入れるのが基本ですが、近い内容の古い版が何本も入っていると、答えが遠回りになります。入口になる1本を決めて、そこから他の資料を指す形にすると整理しやすい。
先に全部そろえようとせず、まず1つのノートブックと3つの質問から。順番はそれで十分です。
ここまでが、資料を入れる・線引きを決める・同期させる・質問リストを設計する、までの話。実際に質問を投げた結果は、次の節に追記しました。
追記(2026年10月8日)。13問を実際に投げた結果
公開時に「10月9日に検証して追記する」と書いた件です。予定より1日早く終わったので、結果を載せます。質問を投げたのは私自身。後任になったつもりで、想定質問10問と予備3問をそのままの言い方で入力しました。
結果は3回分あります。
| 回 | 入れた資料 | ○ | △ | × |
|---|---|---|---|---|
| 1回目(9月24日) | 引き継ぎ書と手順書など31本 | 9 | 3 | 1 |
| 資料を直して同日に再試験 | 同じ30本 | 12 | 1 | 0 |
| 最終版(10月8日) | 後任に渡す形に整えた28本 | 13 | 0 | 0 |
最終版で全問○になっていますが、最初から○だったわけではありません。 1回目で4問に穴が出て、資料を直したから○になった。この順番がそのまま、記事の芯です。
×が出た1問。答えの「所在」が書いていなかった
×は、外部システムに入るための情報がどこにあるかを聞いた質問でした。線引きのとおりログイン情報そのものはノートブックに入れていないので、中身が出ないのは想定どおり。問題は返ってきた答えのほうで、作業用のメモを根拠に「別の資料を見るように」とだけ返ってきました。後任がこの答えを読んでも、どこへ行けばいいか分かりません。
直したのは、入口の資料(はじめに読むファイル)に1行。「ログイン情報は紙で渡す。保管場所はここ」と書き足しました。入れない情報ほど、所在だけは入口に書いておく必要があります。
△が出た3問。書いてはあるが、要点が抜けた
- 手順の中の「やってはいけないこと」が答えに出てこなかった。手順書の本文にはあるのに、代替手順の節に書いていなかったので、そこに1行足した
- 過去の事例を探す質問で、答えが遠回りになった。段取り表に「直近の分をどこで見るか」を1行足した
- 月ごとの確認をどこで見るかの質問で、チェック表の存在が答えに出なかった。手順書からチェック表と説明書へ案内する1行を足した
直した資料は5本、どれも1行ずつ。修正前のコピーを別フォルダに残してから直し、差分が1行だけであることを確認してから同期させました。再試験で△が1問残り、それも同じやり方で1行足して○。
失敗から分かったこと。解答つきの質問リストはソースに入れない
検証の途中で、想定質問リストそのものをノートブックのソースに入れた状態で試したことがあります。結果は全問○に見えました。ただ中身を読むと、リストに自分で書いた「返ってほしい要点」がそのまま返ってきているだけ。解答が手元にあれば、AIは解答を写します。 それでは資料の穴は見つかりません。
想定質問リストは、ソースから外して手元に置く。これは記事の本文に書き忘れていた点なので、ここで足しておきます。
全問○になった後に残る作業
最終版で○がそろっても、終わりではありません。残っているのは、後任が実際に困った場面で聞いたときに、同じ答えが返るかどうか。質問リストはあくまで私が「困りそう」と思った13問で、後任が本当に困る場面はそれ以外にもあります。
だからノートブックは渡して終わりにせず、後任が「答えが出なかった」と感じた質問を、リストに足していく形で残しています。×が出たら資料を直す。その作業を引き継ぐことまで含めて、引き継ぎです。
この記事のまとめ
- 入れるのは新しく作った資料ではなく、すでにある就業規則・手順書・引き継ぎ書
- Gemini Notebookはソースも対話も学習に使われない。ただし職場のルールが優先
- 個人情報・ログイン情報・機微な記録は入れず、口頭と紙で渡す
- Google Driveと同期させれば、「最新版はどれか」を探す作業がなくなる
- 質問は現場の言い方のまま書く。要点と根拠を先に自分で埋めておく
- ○△×で判定し、△は入口に1行、×は手順書に書き足す
- 見つかるのはAIの性能ではなく、資料の穴
- 実際に13問を投げると4問に穴。直したのは資料5本に各1行で、最終版は全問○(10月8日追記)
明日やることを1つだけ挙げるなら、就業規則を1本だけノートブックに入れて、去年自分が聞かれた質問を3つ投げてみることです。答えが出るか、出ないか。どちらに転んでも、次にやることが決まります。
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