【第5回】学会抄録の最終チェックをAIに頼む——「これで提出できる?」と聞く方法
目次
前回までで、全文の変換と部分修正を扱いました。
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【第4回】AIに「ここだけ直して」と伝える——部分修正の頼み方
抄録の全体は気に入っているけど、一部だけ気になる。「全部書き直し」になりがちなAIに、ピンポイントで部分修正を依頼するプロンプトを公開。一文・一段落・一語だけを正確に直して、他の文章を壊さない頼み方をまとめます。学会抄録AIシリーズ第4回。
抄録が一通り書き上がりました。語尾も揃えた。気になる段落も直した。
ここで多くの人が、そのまま提出ボタンを押します。
その前にもう一段ある。AIに「これで提出できる?」と聞く工程です。
自分で読み返すのと、AIに採点させるのは違う
書き上げた直後の自分の目では、自分の文章のアラは見えません。
何度も読み返したぶん、頭の中で文章を補完してしまう。実際には書かれていない論理が、自分には見えている気がする。
AIには予備知識がありません。渡された文章だけを判断材料にする。だから「ここの主語が抜けている」「字数オーバーしている」「結論と考察がつながっていない」を平らに指摘してきます。
提出前の最後の30秒で、これをやるかやらないか。完成度がはっきり変わります。
コピペできる最終チェックプロンプト
そのまま使える形で3つ用意しました。
① 総合採点を頼む
以下は学会発表用の抄録です。
学会抄録としての完成度を100点満点で採点してください。
採点の観点は以下です。
- 字数(指定あれば守れているか)
- 構成(背景/目的/方法/結果/考察/結論が揃っているか)
- 論理(主張と根拠がつながっているか)
- 専門用語の使い方(誤用・不自然な表現がないか)
- 文体(である調で統一されているか)
各観点ごとに点数と短いコメントをつけてください。
最後に「このまま提出できるか/修正が必要か」を一言で判定してください。
【字数制限】
(例:1,200字以内)
【抄録】
(ここに全文を貼り付ける)
最後の一言判定が効きます。「修正が必要」と返ってきたら、もう一度直す。「提出可」と返ってきたら、安心して出せます。
② 字数と構成だけ素早く確認する
以下の抄録について、次の2点だけチェックしてください。
1. 文字数は何字か(句読点を含む/含まない両方)
2. 「背景・目的・方法・結果・考察・結論」のうち、欠けているパートがあるか
【抄録】
(ここに全文を貼り付ける)
時間がないとき用です。10秒で返ってきます。
③ 弱い箇所だけ指摘させる
以下は学会抄録です。
査読者の視点で、弱いと感じる箇所を3つだけ指摘してください。
良い点は不要です。改善が必要な点だけ挙げてください。
各指摘について、
- どの部分か(該当箇所を引用)
- なぜ弱いか
- どう直せばよいか
の3点を簡潔に述べてください。
【抄録】
(ここに全文を貼り付ける)
褒められても役に立ちません。提出前に必要なのは、弱点の指摘だけです。「良い点は不要」と明示するのがコツです。
実際に使ってみる
私は提出の前日に、必ず①と③を両方やります。
①で総合点を出してもらい、85点以下だったら③で弱点を指摘させる。指摘された3箇所を直して、もう一度①にかける。点数が上がっていれば提出。
このループが、だいたい15分で終わります。
以前は、書き上げた抄録を上司や同僚に見てもらい、戻ってくるまで待っていました。早くて翌日、遅いと数日。今は自分の手元で完結します。

もちろん、人に見てもらう価値はなくなりません。AIで磨いてから人に渡せば、相手の時間を無駄にしません。誤字脱字レベルではなく、内容そのものに対するコメントが返ってきます。
AIの採点をそのまま信じない
ひとつ注意があります。
AIの採点は、あくまで参考値です。「85点」と返ってきたから提出できる、ではありません。
AIは学会の評価基準を知りません。あなたの研究分野の文化も、査読者の好みも知らない。一般的な「良い文章の条件」で採点しているだけです。
だから使い方はこうなります。
- 高得点が出ても、内容の正しさは自分で保証する
- 低得点が出たら、指摘の中身を見て、納得できるものだけ採用する
- 「専門用語の使い方」での指摘は特に慎重に。AIが医療・介護の慣習を知らないことがある
採点は出発点で、判断は人間がする。これは前回までの記事で書いてきたことと同じです。
字数オーバーは機械的に削る
最終チェックで一番多いのが「字数オーバー」です。
これは内容の問題ではなく、機械作業です。AIに任せられます。
以下の抄録を、内容を維持したまま〇〇字以内に収めてください。
削除する優先順位は次の通りです。
1. 重複している表現
2. 「〜と考えられる」など、断定を避ける冗長な表現
3. 接続詞の重複(「そして」「また」が連続するなど)
数字・固有名詞・結論は絶対に削らないでください。
【目標字数】
(例:1,200字以内)
【抄録】
(ここに全文を貼り付ける)
優先順位を明示するのがポイントです。指示しないと、AIは結論を削ってでも字数を合わせにきます。
この記事のまとめ
- 書き上げた直後の自分の目では、自分の文章のアラは見えない
- AIに「これで提出できる?」と聞き、字数・構成・論理・専門用語・文体の5観点で採点させる
- 「良い点は不要」「弱点だけ3つ」と絞ると、提出前に役立つ指摘だけが返ってくる
- AIの採点は参考値。最終判断は自分がする
- 字数オーバーは内容修正ではなく機械作業として、優先順位を指定して削らせる
シリーズの最後に
ここまで5回、学会抄録をAIで準備する流れを書いてきました。
- 第1回:AIに渡す前に、現場メモを5分で整理する
- 第2回:Geminiに草案を作ってもらう
- 第3回:文体を一括変換する
- 第4回:気になる箇所だけ部分修正する
- 第5回:提出前にAIで採点する
全部つなげると、白紙から提出までの一連の流れになります。
このシリーズで一番伝えたかったのは、AIは「文章を書いてくれる魔法」ではなく、「自分の頭を整理する道具」だということです。現場で見てきたこと、考えたこと、その材料は自分の中にしかありません。AIはそれを抄録の形に整える手伝いをするだけです。
材料が薄ければ、AIで磨いても薄いままです。逆に、メモが具体的なら、AIで仕上げた抄録も具体的になります。
明日からの現場で、気づいたことをひと言メモする。そこから始めてください。次の学会のとき、抄録づくりが今までとは別物になっているはずです。
次に試したいAI活用
抄録の次に効果が出やすいのは、毎月の委員会議事録です。3日かかっていた作業を10分にした実例を、全4回シリーズでまとめています。
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このシリーズでは、医療介護現場で実際に使っているAI活用術を発信しています。 Xアカウント(@genba_pt_ai)でも毎日情報を発信中です。